floodgateとループ界
floodgateは「24」の縮図
第20回世界コンピュータ将棋選手権の参加チームは、1次予選終了時点のリーグ戦表から察するに、全部で45チームになるようだ。
このような公の大会に備え、「floodgate」(shogi-server上で将棋プログラムを連続対戦させる対局場)上では常時数多くのプログラムがしのぎを削っている。開発者やファンの方々が集う掲示板などを見ると、「あのプログラムは何者だ?」などのような会話がされていたりして面白い。おなじみのインターネット将棋道場「将棋倶楽部24」でファンの方々がする会話と同じだ。もっとも、コンピュータ将棋のほうは狭い世界なので、その回答はすぐに明らかになっているようだ。
24から、人間的な感情面の揺れで手が乱れたり無礼に対局を切断してしまうような面を取り除き、非常に抽象化したものが、floodgateといえるかもしれない(floodgateで、バグで急に対局が切断するような面は、人間臭いといえるかも)。
ふと、floodgateは「ループ」(鈴木光司 著)の「ループ界」のようなものだな、と思った。今「ループ」と聞いてもピンとくる方はあまりいないかもしれないが、「リング」「らせん」に続くリングシリーズ三部作の最終作品、と聞けば思い出してくれるだろうか。
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「見ると死ぬ呪いのビデオ」に始まる不条理な恐怖を描いた『リング』、その後日談を医学的視野から描いたサスペンスタッチのホラー『らせん』の一連の物語の完結編。主人公は二見馨という20歳の青年。『リング』『らせん』で描かれた一連の物語は、実は超巨大コンピュータ内にプログラムされた「生命の進化を科学的に検証するための仮想世界の出来事であった」という、意表を突く壮大なスケールのSFとして描かれており、正確には「ホラー小説」ではない。
以下少しだけネタバレを含むかもしれない。
リングウイルスとボナンザチルドレン
ご存知大ヒットホラーサスペンス「リング」、個人的につまらなかった「らせん」*1に続き、近未来SFの方向にテーマをぶっ飛ばした「ループ」は、壮大なスケールと衝撃の結末で個人的に非常に面白かったという記憶がある。「リング」「らせん」での登場人物達の細かい心理描写は何だったんだ、という突っ込みはさておき、実世界をライフゲームとして再現した実験だったというぶっ飛んだ設定に度肝を抜かれたものだった。
ループ界で増殖する貞子の子供(分身)達、通称「リングウイルス」は、コンピュータ将棋界に颯爽と現れた「ボナンザ」と、そのライブラリを利用して強豪と化し増殖する「ボナンザチルドレン」の様子に当てはまる。
やがてループ界から現実界にも侵食を始めたリングウイルス。ボナンザチルドレン(とその他コンピュータ将棋)も、現実界に進出し、プロ棋士を凌駕していくことだろう。今後も脅威を増し、プロ将棋界の権威を失墜させ、破壊していくのだろうか。一方で、それに対抗する「ワクチン」は現れるのだろうか・・・。
少なくとも、「稲庭将棋」はワクチンにはなれなかったようだ。
世界コンピュータ将棋選手権において,対局での勝利は以下のように分類される.
a. 相手の投了
b. 相手玉の詰み
c. 正当な入玉宣言
d. 相手の時間切れ
e. その他(相手の反則など)
本将棋プログラムは,“d. 相手の時間切れ”による勝利を積極的に目指すものである.
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「ダイブ」=全幅探索
余談だが、「ハチワンダイバー」における「ダイブ」は、「悪手と判断できる手は先を読まずにハブく」という人間的な実現確率探索から、「すべての変化を徹底的に読み切る」全幅探索モードへスイッチした状態、とも表現できるかもしれない。
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