将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

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「虹色三間」について考えてみる

1つ前のエントリー「銀河戦:小倉久史七段が三間飛車を駆使し決勝トーナメント進出」にて、小倉七段の多彩な構想を「虹色三間」と評したあと、「では実際、虹色三間の7つのバリエーションとは何だろうか?」という疑問が沸いてきた。

「虹色四間」

ここで、元ネタとなっている「虹色四間」についてそもそもご存じない方のために説明しておこう。
「虹色四間」は、約10年前に「週刊将棋」誌上で連載されていた、つのだじろう著の将棋漫画である。私自身「週刊将棋」はほとんど読んでいなかったし、今や内容をほとんど覚えていないが、『7つのバリエーションの四間飛車を「虹色四間」と総称し、これらを駆使して主人公がライバルとの戦いに挑む』、といった内容だったと思う。たしか、

  • 立石流
  • 対居飛穴の向かい飛車振り直し

などがあったと思うが、7つすべてを思い出すことはできない。下記のWikipediaにも載っていない。ご存知の方がいらっしゃいましたら教えて下さい。

「5五の竜」

本作は、もっとずっと前に連載していた、同著者による「5五の竜」の続編に近い内容といえる。私は「5五の竜」はすべて読んだはずなのだが、こちらも内容をほとんど覚えていない。
「5五の竜」と「虹色四間」の概要については、下記Wikipediaを参照あれ。


『5五の龍』(ごごのりゅう)は、つのだじろうによる将棋をテーマとした漫画作品。当稿では本作の続編ともいえる『虹色四間』(にじいろしけん)についても解説する。

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ただ、「5五の竜」における「飛騨白川郷の大家族の家!合掌造りの駒組み!」という見事な布陣は、名フレーズとともに今でも脳裏に焼きついている。ネットで調べてみたら、「ギズモのつれづれ将棋ブログ」様の「将棋漫画「5五の龍」より」というエントリーで、この対局の模様が紹介されていた。

三間飛車における7つのバリエーションとは

さて、いよいよ本題。検討してみたところ、都合よくぴったり7つとなった。

  1. コーヤン流(対居飛穴の▲5七銀型美濃囲いの布陣をひっくるめて。したがって「真部流」も含む)
  2. 対居飛穴・相穴熊
  3. 対居飛穴・向かい飛車への振り直し
  4. 対居飛穴・玉頭銀(「下町流三間飛車」(小倉久史七段 著)で解説されている構想*1。)
  5. 石田流(▲9七角と上がる古典的石田流や、角道を止めて6八や5九に角を引く石田流をひっくるめて。楠本式石田流もこれに含める)
  6. 升田式石田流(角道を止めない、角交換辞さずの石田流をひっくるめて。したがって「新・石田流(7手目▲7四歩)」も含む。立石式石田流もこれに入れてしまうとする)
  7. 2手目△3二飛戦法(詳しくは「2手目の革新 3二飛戦法」(長岡裕也四段 著)参照

いかがだろうか。これを毎局毎局使い分け、しかも勝ち続けることができたら、究極の三間飛車党といえるだろう。

*1:P144に「第1部講座編では、玉頭銀・石田流・相穴熊の戦いを研究した。これらを総合して下町流三間飛車と称した〜」と述べられているわけだが、とりわけこの玉頭銀が小倉七段独自の構想であり、そのゴツゴツとした攻め筋は「下町流」と呼ぶにふさわしいのではないか、と感じる。

銀河戦:小倉久史七段が三間飛車を駆使し決勝トーナメント進出

「下町流三間飛車」の使い手、小倉久史七段

三間飛車党の方々にとって小倉久史七段といえば、「下町流三間飛車―居飛穴攻略の新研究 (振り飛車の真髄)」でお馴染みだろう。

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その小倉七段が、第17期銀河戦にて三間飛車の連続採用で4連勝。Aブロックの最多勝ち抜き者として決勝トーナメント進出を決めている。しかも、今流行の石田流ではなく、序盤早々にすぐ△4四歩(または▲6六歩)と角道を止める、いわゆる「ノーマル三間飛車」で、だ。

参考URL

特筆すべき内容

しかも勝ちあがってきた内容がすばらしい。以下に簡単に列挙してみよう。

対戦相手が強敵

初戦が糸谷哲郎五段、2戦目が平藤眞吾六段、3戦目が松尾歩七段、そして4戦目が島朗九段という、若手強豪と古豪が入り混じる、そうそうたるメンバーだった。

4局中3局が後手番

九段戦を除き、3局が後手番。厳しい後手三間で勝ち抜いている。

4局とも相手が居飛車穴熊

今に始まったことではないが、やはり居飛車穴熊が猛威を振るっている。とりわけ持ち時間の短い銀河戦では、角や桂の「流れ弾」をうっかり食らわないよう、とにかくしっかり囲ってしまいたいという心理が居飛車党に働くから、なおさらかもしれない。また、短い持ち時間の中、攻めに専念できる可能性が高くなるという利点もある。
しかし小倉七段は居飛穴を打ち破り続けた。

  • 糸谷五段戦は、相穴熊
  • 松尾七段戦は、居飛穴に囲いきる前に向かい飛車に振り直して攻めつぶし。
  • 平藤六段戦、島九段戦は、美濃囲い+石田流へのシフト。

という、「虹色三間」*2とも例えられそうな多彩な構想を見せた。天晴。

残る戦いにも大いに期待

ちなみに、小倉七段は最多勝ち抜き者として決勝トーナメント進出は決めているものの、まだ本戦トーナメントは終わっていなく、残るは行方尚史八段と三浦弘行八段の2人。こちらの戦いにも期待しよう。流れからいうと、三間飛車戦法で貫いてくれるだろう。もちろん、決勝トーナメントでも?

*1:ところで、以前からずっと気になっているのだが、なぜ「囲碁・将棋チャンネルホームページ」はフレーム構成になっているのだろう。どのページもURLが同じになってしまうので、非常に使い勝手が悪い。ページを参照・紹介するときにとても不便だ。SEO的にも良くないはず。修正した方が良いと思う。

*2:ご存知「虹色四間」のもじり。「5五の龍 - Wikipedia」参照。