将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

<解答編>助言と、悪手と、モンティ・ホール問題と、ロシアンルーレット

2008/07/10のエントリー「助言と、悪手と、モンティ・ホール問題」の解答編。
問題1は、タイトルにあるようにモンティ・ホール問題(モンティホールジレンマ)と呼ばれるもの。
問題2は、特に制限の無い一般的な問題。「ロシアンルーレット」(順番方式)だ。
解説の簡単化のため、各指し手を以下のように置き換える。

  • 攻める手・・・「A」
  • 守る手・・・「B」
  • じっと手を渡す手・・・「C」

解答1「プロ棋士が話しかけてきた」

あなたは、手を変えたほうがよい。当たる確率が、2倍になる。つまり、変えないとき当たる確率は1/3、変えたとき当たる確率は2/3、ということ。

詳しい解説は、「モンティ・ホール問題 - Wikipedia」を参照。私なりの解説も、下記に示しておこう。

「2分の1」じゃないの?

プロ棋士の助言後、残る選択肢は2つ、正解は1つ。確率は2分の1にみえる。しかし違う。あなたは、下記情報を知っている。


プロ棋士は、あなたが選んだ手「A」を見て、それ以外の手(「B」、「C」)の中から悪手を1手教えてくれた。
これが大きくものをいう。プロ棋士は、仮に「A」と「B」が悪手だったとしても、「A」とは助言できない状況にあった(「B」と助言するしかない)。「A」と「C」が悪手だったとしても同様に、「C」と助言するしかない。

プロ棋士が、「C悪手」と助言をした経路

プロ棋士が「C悪手」と助言をするには、2通りの経路がある。すなわち、

  1. 正解手が「A」(手を変えなければ正解!)で、プロ棋士が「C悪手」と助言
  2. 正解手が「B」(手を変えれば正解!)で、プロ棋士が「C悪手」と助言

どちらの経緯で「C悪手」、と助言するにいたったか。確実にはわかるわけがない(それすなわちあなたが最善手をわかることになってしまう)。しかし、どちらの経緯で「C悪手」、と助言した確率が高いかは、計算することができる。下記の表を見てみよう。

  • 1.の経路、すなわち正解手が「A」の場合
    • 「B悪手」と助言する確率と「C悪手」と助言する確率は50%と等しい。その確率を経て、「C悪手」、と助言したことになる。
  • 2.の経路、すなわち正解手が「B」の場合
    • 「A悪手」、「B悪手」とは助言できないので、必ず「C悪手」と助言する。

したがって、2.の経路、すなわち正解手が「B」の場合の経路を通って、「C」は悪手と助言した確率のほうが2倍高い。よって、手を変えたほうが正解に近づく。
参考までに、選択肢を5手に増やし、あなたが「A」を選択、プロ棋士がそれ以外の「B」〜「E」のうち、「B」以外(すなわち「C」「D」「E」)を「悪手」と助言してくれた場合の表を下記に示しておく。手を「A」から「B」に変えると4倍当たる確率が高くなることがわかるだろう。



実践的解説としては、「DOFI-BLOG どふぃぶろぐ ネコでもわかるモンティホールジレンマ」Flashを使ってわかりやすく作られている。参考になるだろう。が、数学的解説としては不十分(というか誤り?)。なぜ問題2のケースの解答が異なるのか、解説できないのではないだろうか。

ポイントは、プロ棋士はあなたが選んだ手を絶対に選ばないので、必ずゲームは成立する、ということ。問題2の場合は異なる。

解答2「プロ棋士がつぶやいた」

あなたは、手を変える要因を持たない。つまり、残る2手の当たる確率は、両方とも1/2。これは、いってみれば「ロシアンルーレット」(順番方式)と同じ。

プロ棋士が、「C悪手」と助言をした経路

問題1と同じく、経路は2つ。

  1. 正解手が「A」で、プロ棋士が「C悪手」と助言(手を変えなければ正解!)
  2. 正解手が「B」で、プロ棋士が「C悪手」と助言(手を変えれば正解!)

ただし、表にするとその中身の違いがわかる。

  • 1.の経路、すなわち正解手が「A」の場合
    • 「B悪手」と助言する確率と「C悪手」と助言する確率は50%と等しい。その確率を経て、「C悪手」、と助言したことになる。
  • 2.の経路、すなわち正解手が「B」の場合
    • 「A悪手」と助言する確率と「C悪手」と助言する確率は50%と等しい。その確率を経て、「C悪手」、と助言したことになる。「A悪手」と助言する可能性もあった、というのがポイント。

したがって、どちらの経路を通ってきたかは等しく、1/2の確率である。よって、当たる確率も1/2。

ここで1つポイントなのが、「A悪手」と助言してくれた場合。「A」選択の場合は喜び勇んで手を変えるわけだが、結局残る「B」「C」の当たる確率はそれぞれ1/2。どう助言をつぶやいてくれようが、残る2手の当たる確率は1/2なのだ。「A」中心で進めていた自分の読み筋が却下されたわけで、このときのほうが物理的(読んだ手数の数)にも精神的にも痛いだろう。なお本ゲームにおいては、はじめに「A悪手」と助言していたら、その時点でルールに逸脱することになり、ゲームはやり直しとなる。ちなみにこれは1/3の確率。3回に1回はゲームやり直し、ということだ。

できればこの例を実践するFlashを作りたいものだが、時間がかかりそうなのでやめておく。(上のFlash作っている方、作っていただけないかな)