チェスの碁盤を模したケーキ
第16回コンピュータ将棋オープン戦にて、「大将軍」が優勝
「大将軍」初出場、初優勝
2011/04/09に行われた、第16回コンピュータ将棋オープン戦にて、初出場の「大将軍」が優勝した。
実績のある「GPS将棋」や、力をつけてきた「Ponanza」を破っての優勝。お見事。なお、「大将軍」開発者様のWebサイトは見つけられなかった。
第21回世界コンピュータ将棋選手権は5月3日〜5日
このオープン戦は、来月行われる第21回世界コンピュータ将棋選手権の前哨戦ともいえる。
オープン戦では参加チームが少なく、評価は難しいが、「大将軍」は上位に進出する力を見せつけたといえそうだ。
- 第21回世界コンピュータ将棋選手権
- 第20回世界コンピュータ将棋選手権(昨年の結果。「激指」優勝)
- コンピュータ将棋2011: 詰将棋メモ
なお、昨夜「第21回世界コンピュータ将棋選手権」のWebサイトを訪れたときはダウンしていたが、現在は復旧している。
関連エントリー
- 第20回世界コンピュータ将棋選手権開催(2010/04/30のエントリー)
「久保の石田流」書評
久保利明二冠、初の石田流専門書
つい先週、
と2本のエントリーを書いた。
久保棋王・王将がダブル防衛を果たしたあと、昨年と一昨年の石田流はどんな形だったかなとふと思い、振り返ってまとめてみたわけだが、そのまとめ作業の最中、久保二冠が石田流のみを解説した棋書を発売することを知った。それが「久保の石田流」だ。先月末から発売開始している。
久保の石田流 | |
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意外にも久保二冠にとってはじめての石田流専門書となる本書(ちなみに鈴木大介八段は現時点で3冊もの石田流専門書を著している)。早速買って読んでみたので、簡単に感想を述べたい。
「最強久保流振り飛車 さばきのエッセンス」三間飛車編
本書は、「将棋世界」誌にて連載中の久保二冠の講座「最強久保流振り飛車 さばきのエッセンス」の、先手石田流および後手石田流の部分を加筆、修正し再構成したものだ。この講座については、過去に以下のエントリーで紹介した。そちらで書いた感想も、本書の内容の参考になるはずだ。
なおこの講座は現在も連載中で、先手石田流→後手石田流ときて現在はゴキゲン中飛車を解説している。
本書の目次を紹介しておこう。
「鈴木流急戦」とは、いわゆる「新・石田流 7手目▲7四歩」のこと(詳しくは『「新・石田流(7手目▲7四歩)」まとめ (特許明細書風)』などを参照)。そして「久保流急戦」とは、初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲4八玉△6二銀のところで▲7四歩(第1図)と突く急戦のことだ。第34期棋王戦・佐藤康光棋王(当時)戦の第2局でも現れた。
第1章 石田流の入り口
第2章 升田式石田流の基礎知識
第3章 早石田定跡
第4章 鈴木流急戦
第5章 久保流急戦
第6章 その他の石田流
後手の棒金戦法
後手の左美濃
後手の居飛車穴熊
4手目△5四歩
第7章 後手の石田流
後手の石田流
2手目△3二飛戦法
第8章 最新の石田流
第9章 実戦編
参考棋譜
石田流の基礎知識から後手番石田流の2手目△3二飛まで、非常に幅広く解説されていることがわかる。そのぶん1章ごとのページ数は短めといえるかもしれない。
ただしその中身は非常に濃く、実戦で現れた手順が何度も登場する。ココセではなく、現時点での最善手の応酬手順が解説されているのだ。そのため、安易に石田流優勢としているわけではなく、形勢不明かやや不利かもしれない、と結論付けられている章すらある。
ここまで研究手順をさらけ出してしまってよいのか、と読んでいて心配になる箇所もあった。が、久保二冠にとっては、あくまでも現時点での研究結果を披露したのみという感覚であり、将来的に結論を覆したり、新手や新定跡を生み出せるという自信があるのではないだろうか。
加筆された「最新の石田流」と「実戦編」
本書は基本的には将棋世界の講座と同じだが、大きく異なるところが2点ある。それが第8章「最新の石田流」と第9章「実戦編」。
「最新の石田流」では、初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩の局面で、
(1)▲7四歩△同歩▲4八玉
(2)▲7四歩△同歩▲5八玉
(3)▲7六飛
の3つの手順が紹介されている。(3)▲7六飛は第36期棋王戦・渡辺明竜王戦の第1局で現れた形であり、記憶に新しい。
解説についてはぜひ本書を参照されたい。なお、第35期棋王戦・佐藤康光九段戦の第3局で現れた▲4八玉△6二銀▲7六飛という手順の解説は見当たらなかった。
実戦編では7局の棋譜と解説が載っている。タイトル戦だけでなく、A級順位戦などの棋譜も載っており、相手はすべてトッププロだ。こんなぜいたくな実戦譜ばかりを集められる棋士はごくわずかだろう。
「対局会場アーカイブス」の会場情報を更新しました
前バージョンの約1.4倍、152会場の情報を収録
Android端末向けアプリ「対局会場アーカイブス」をバージョンアップしました。
2003年度から2010年度まで、過去8年間・計152会場の情報を収録しました。つい先日まで行われていた、第36期棋王戦、第60期王将戦の対局会場情報も含みます。前バージョンと比較して、情報量が約1.4倍に増えました。
なお、そもそもこれが何のアプリかご存じない方は、下記記事などを参照ください。
「チェスクロイド」も好評公開中
同じくAndroid端末向け対局時計アプリ「チェスクロイド」も公開中です。
おかげさまで2500ダウンロードを突破しました。5段階評価で4.4の評価を受けており(評価人数:16人)、概ね好評のようです。
ルール変更、持ち時間変更はもちろん、文字色や壁紙などの変更も可能です(下図は一例)。お手持ちのお好きな画像を壁紙にお使いください。
「実戦に役立つ詰め手筋」書評
勝又教授の終盤戦講義
「実戦に役立つ詰め手筋」は、勝又清和六段が著した、詰みや寄せの指南書である。
実戦に役立つ詰め手筋 (マイコミ将棋BOOKS) | |
勝又 清和 毎日コミュニケーションズ 2008-09-23 売り上げランキング : 133370 Amazonで詳しく見るby G-Tools 関連商品 最新戦法の話 (最強将棋21) 寄せが見える本 〈基礎編〉 (最強将棋レクチャーブックス (1)) 寄せの手筋200 (最強将棋レクチャーブックス) 羽生善治の終盤術(1) 攻めをつなぐ本 (最強将棋21) 橋本崇載の勝利をつかむ受け (NHK将棋シリーズ) |
最先端の定跡を、アマチュアにわかりやすく噛み砕いて伝えることで知られる「教授」だが、終盤戦を取り扱ってもその軽妙な解説は変わらない。
2010/02/11のエントリー「勝又教授の補修講義 on Twitter」にて、私の終盤力の弱さを露呈し、そして次の一手問題の疑問を勝又教授に解決していただいたエピソードを書いたわけだが、教授のご好意はこれだけでとどまらなかった。昨年、「最新戦法の話」(勝又清和六段 著)の翻訳プロジェクト(詳しくは2010/04/10のエントリー『「最新戦法の話」英訳完了』など参照)に参加させていただいた縁もあってか、なんと本書籍をサイン入りで献本してくださったのだ。サインの言葉は、
「指した手が最善手」。アマチュアにとって、なんとも救われる、将棋を続けようと思える素敵な言葉だ。
献本してくださったのは昨年夏の話。遅ればせながら、書評を書かせていただく。
高難度の詰め手筋指南
本書は単純な詰将棋の棋書ではなく*1、寄せの場面で「何を持てば詰むか」、また受けの場面で「何を合駒するか」についての問題が数多く詰め込まれた棋書である。部分図の問題だけでなく、実戦譜に基づいた出題もある。対象とする読者は間違いなく有段者といってよいだろう。そんな難しい本だが、企画のきっかけが面白い。
当時子どもスクールの講師をしていた私は、詰め将棋や次の一手以外に、面白くて役に立つ問題はないだろうかと、いろいろ考えていました。そんなときに思いついたのが、持駒を?にして何を持ったら詰むかという問題です。
(まえがきより引用)
子供達の受けもよかったそうだ。子供の場合は、とりあえず何か1つでも詰む手段を見つけてもらえばオーケーとしてもよい。「□+□=5で、□に入る組み合わせは?」といった「イギリス式算数」にまさしく通じるところがあり、発想力を鍛えるにはもってこいだろう。
しかし、有段者には読み抜けなくしっかり解いてください、と。両側面の表情を持つ、なんとも恐ろしい出題形式ともいえるかもしれない。
ごくごく簡単な問題2問を解答無しで紹介させていただく。図では先手の持駒が「なし」になっているが、はたして何が持駒にあれば詰むだろうか。
香が3一にあるかないか、たったこれだけの違いで、解答にいくつかの変化があることがわかる。また、すべての持駒について一通り読まなくてはならないため、意外に労力がかかることがわかる。複雑な問題になればなおさらだ。類似局面の問題で、正解した気になって解答を見て、読み抜けに気付かされて(罠が1つではなくいくつもある)愕然としたことが何度もあった。
この形式の問題を解くことによって、読みの集中力が付くことは間違いないと感じた。また、詰めろのかけ方もうまくなるだろうし、「盤上でどの駒を拾いに行けばよいか」「寄せのためにはどの駒を受けに使わず残すべきか」などを意識しながら中終盤を戦えるようになるだろう。
「最新戦法の話2」に期待
終盤戦についても素晴らしい著書を残してくれた勝又六段。次に期待するのは、現在「将棋世界」で連載中の「突き抜ける!現代将棋」の書籍化だろう。タイトルが「最新戦法の話2」になるのかどうかはわからないが、これに順ずるものとなるはずだ。楽しみに待つことにしよう。
なおこの講座のここ数回の内容を@shogitygooさんが綺麗にまとめているので、参考にされたい。
将棋世界 2011年 04月号 [雑誌] | |
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