将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

「鈴木大介の将棋 三間飛車編」書評(1)「対急戦」

鈴木大介の将棋」シリーズ、待望の三間飛車

2009年4月、「鈴木大介の将棋 三間飛車編」(鈴木大介八段 著)が発売された。

鈴木大介の将棋 三間飛車編
鈴木大介の将棋 三間飛車編鈴木 大介

毎日コミュニケーションズ 2009-04-24
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starコーヤン流とは似て非なるもの

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本書では、対急戦、対持久戦の両方が載っている。しかも、対持久戦は対居飛車穴熊だけでなく対左美濃も。盛り沢山で、お得感がある。
鈴木八段といえば、「新・石田流」(詳しくは『「新・石田流(7手目▲7四歩)」まとめ (特許明細書風)』『(升田式)石田流のひとくちメモ -予備知識-』等を参照下さい)に象徴されるように、「石田流使い」という印象が非常に強いが、本書では序盤早々に△4四歩と角道を止める、いわゆる「ノーマル三間飛車」戦法のみを解説している。

また、三間飛車側がすべて後手番となっている。これは、一手遅れる後手番での三間飛車で苦慮しているファンから見て、とてもうれしいはずだ。中立性がある(もしくは若干居飛車寄りか)「道場」シリーズの「三間飛車道場」を除き、三間飛車解説本は一般的に三間飛車が先手番であり、「後手番じゃ一手遅れて使えない」と不満に思っている読者も少なからずいただろう。
ついでに、他のノーマル三間飛車本における先手番/後手番についてまとめておこう(すべて三間飛車側からみた手番)。

  • 「コーヤン流三間飛車の極意 急戦編」(中田功七段 著)・・・後手番
  • 「コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」(同上)・・・先手番
  • 「下町流三間飛車 居飛穴攻略の新研究」(小倉久史七段 著)・・・第5章「対居飛穴の秘策!! 後手番相穴熊」は文字通り後手番。第1章〜第4章は先手番
  • 三間飛車道場 第1巻〜第3巻」(所司和晴七段 著)・・・後手番

何よりの特徴として、本書で紹介されている手順は、かなりのオリジナリティがある。

  • 「対急戦」は、他のどの棋書にも載っていない、完全オリジナル(私の所有している棋書*1を調べた限りでは)。
  • 「対持久戦」は、「三間飛車道場」に載っている構想も含むが、かなり先の方まで深く解説されている点が良い。

それではまず、「対急戦編」についてレビューしてみたい。

対急戦のオリジナル構想「△5三銀・△4二金」型

書籍の帯に

対急戦には5三銀・4二金型
穴熊には5筋からのと金攻め
これぞ振り飛車のさばき!!

と書いてあることからわかる通り、本書の対急戦構想の骨子は「△5三銀・△4二金」型だ(第1図)。4二の金は、5二から寄ったわけでなく、4一から直接上がっている。
この形で、▲4五歩超急戦、そして▲5七銀左からの通常の急戦、いずれをも対処できる。△4二金は、いずれ△4三金と上がるケースが多く、とにかく力強い。場合によっては(居飛車棒銀の場合には)、第2図のように袖飛車から玉頭攻めを仕掛ける変化も持つ。

詳しい手順については、書籍を読んでいただこう。

「パワー三間飛車」?!

この「△5三銀・△4二金」型を、その力強さからして、「パワー三間飛車」と名付けてもよいのではないだろうか。「将棋世界」をお読みの方々はすぐお気付きの通り、これは将棋世界で鈴木八段が連載中の「大ちゃんの時代はパワー中飛車」をもじっており、ちゃんと命名に関連性がある。

表芸・裏芸の2段構えで戦う

対急戦の後手番三間飛車は、実は通常の定跡形(例えば対超急戦の第2図、対持久戦の第3図)でも振り飛車不利との結論は出ておらず、十分戦える。

そこで三間飛車党としては、この書籍で紹介されている「パワー三間」を裏芸あるいは表芸として使えるようにしておき、両方を場合によって使い分ける「2段構え」でいくのが良いかもしれない。今まで対急戦では定跡形以外に他に選択肢がなかった(そして居飛車側は読みやすかった)ので、相手に事前研究や読みを限定させないという意味でも、とても有効だろう。

書評(2)「対居飛車穴熊」」に続く。