将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

石田流のハメ手の落とし穴

第34期 棋王戦五番勝負 第2局

本日行われた棋王戦第2局。先手・久保利明八段は、石田流からの新趣向で魅せた。

初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲4八玉(第1図)と進行。

7手目に▲7四歩と突く「新・石田流」(本戦型の簡単な説明については『「新・石田流(7手目▲7四歩)」まとめ (特許明細書風)』参照)を見送り、▲4八玉と上がった格好だ。
漫画(ドラマ)「ハチワンダイバー」の中で、「7手目▲7四歩で将棋は終わり(先手良し)」と語られていたわけだが、どうやら最近の研究ではそうではないようだ。このように見解が変化する可能性については、当ブログの2008/06/05のエントリー『ハチワンダイバーの新石田流にみる「終わり」の定義とは』で述べた通りで、想定内だ。
最新の研究動向を私は知らないが、最近の実戦譜から察するに、おそらく15手目▲7四同角に対し16手目△6二金と真っ直ぐ立って受けるのが有力で、後手良しと見られているような気がする。

本エントリーは新・石田流について述べたいわけではないので、説明はこの辺にしておく。

新手?▲7五飛

さて本譜は第1図以下△6二銀▲7四歩!?△7二金▲7五飛!?(第2図)と進行。

いったん▲4八玉と上がり、△6二銀と上がらせてから▲7四歩。これには本譜の通り△7二金とがっちり上がられ、攻め切れず(または▲7三歩成△同銀の形は先手が手損しているともいえるため)先手悪い、というのが従来の定跡だが、そこで軽く▲7五飛!?
三間飛車党、石田流党としては何とも魅力的な手順だ。渡辺明竜王のブログでは下記のように述べられており、おそらく新手とのこと。

序盤の▲7五飛は初めて見た手で、おそらくは新手だろうと思います。軽い捌きを得意とする久保八段ならではの手で、素人は真似しないほうが良さそうですね、僕も無理そうです(笑)

久保新手「ネオ・石田流(9手目▲7四歩)」、「▲7五飛戦法」、または「中座式石田流」とでも呼ばれる日が来るのだろうか。後日雑誌等での評価を待ちたい。必見。

これも本エントリーの趣旨とは異なるので、説明はこの辺にしておく。

超有名手筋「▲9五角で王手飛車」の落とし穴

さて、いよいよ本題。「石田流の王手飛車手筋」といえば、どなたも「あの」局面が思い浮かぶのではないだろうか。第1図以下△8六歩▲同歩△同飛に、▲7四歩(第3図)。

以下△7四同歩▲2二角成△同銀▲9五角!の王手飛車で先手必勝、のはず。

だが実は、この手順は大きなココセなのだ。△7四同歩のところで、後手の有力手は△8七飛成(第4図)。

これには▲7三歩成でと金ができて先手良し、といいたいところ(実際「石田流道場 (東大将棋ブックス)」にはさらっとそう書かれている)だが、普通に△7三同桂とされ(なお「決定版 石田流新定跡―ライバルにひとアワ吹かす必勝戦法!」では△7七歩が紹介されている)、なんとこの桂が取れない。すなわち▲7三同飛成には△8八角成がある。

そこで、△7三同桂以下▲2二角成△同銀▲5五角(▲7三飛成より勝る)△3三角▲7三角成、と王手で先手をとって攻めるが、△6二銀▲同馬(▲9一馬は△8九竜で後手良し)△同玉(△同金は▲7一飛成)▲8八歩△6七竜▲6八金△6五竜(第5図)。

先手良しながら、本来の「王手飛車で必勝」のイメージとはかけ離れている。それどころか、アマチュア的には後手の方を持ちたいかもしれない。

本手順は、将棋世界2004年4月号の「将棋カウンセリング」で上野裕和四段(当時)が解説している手順だ。正直、「第5図から先手が優勢を保つ手順を教えて下さい」と継続質問したいくらい、△8七飛成〜△7三同桂以下の変化は興味深い。しかし、近年数多く出版された石田流関連書籍では一度も紹介されていない。
このままほとんどの方が知らずに埋もれてしまうにはもったい面白い手順なので、今回少しだけ紹介させていただいた。石田流を指す方は、本来は本変化に持ち込まれることを覚悟しておく必要がある。

▲7五飛といい△8七飛成といい、石田流は、いや将棋は序盤から本当に奥が深い。