振り飛車穴熊の栄枯盛衰
広瀬章人新王位誕生
広瀬流四間飛車穴熊
今回のタイトル戦ではじめて知った(私の情報収集が遅かったか)のが、「広瀬流」と呼ばれる四間飛車穴熊の布陣(第1図)。▲4五歩と突いて△3三銀と引かせた後、▲4七銀と引いて▲5六歩〜▲5五歩と5筋を狙う指し回しだ。
本タイトル戦では、相穴熊の戦いが実に目立った。これを期に、昔ながらの振り飛車穴熊VS居飛車穴熊の戦いの歴史をほんの少しだけ振り返ってみたい。
振り飛車穴熊VS居飛車穴熊 極小史
古くは大内延介九段(今年引退)や福崎文吾九段が振り飛車穴熊党として有名だ。振り飛車穴熊の棋書も執筆している。
相穴熊の節は、▲5六銀と居飛車側の動きを早期に牽制、△4四歩〜4三金の形(あまり堅くない)を余儀なくさせておいて、▲4八飛〜6五歩〜4五歩と積極的に攻めていく形を解説しています。
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妖刀流とも評されるその独特の指しまわしで、谷川浩司九段をして「感覚を破壊された」と言わしめた、穴熊のスペシャリスト福崎八段による振り飛車穴熊戦法の入門書です。全222ページ、見開きで局面図が4枚の5部構成となっています。
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居飛車穴熊VS振り飛車穴熊と聞いて私が真っ先に思い浮かぶのは、第2図のように振り飛車側が(振り飛車側を後手として)6筋に飛車を転換して攻めていく形。実際この図は1999年発売の「これが最前線だ!【最新定跡完全ガイド】」(深浦康市九段著)のテーマ17になっていて、当時プロ棋戦でもアマ棋戦でも結構見られた戦型だったと思う。なお同書籍のテーマ16も居飛車穴熊VS振り飛車穴熊だ。
次いで2003年発売の「最前線物語」(深浦九段著)では、居飛車穴熊VS端歩位取り穴熊がテーマ17(第3図はテーマ17から少し進んだ一例)として取り上げられたものの、振り飛車側から見て成績は芳しくなかったようで定着せず、ついには2006年発売の「最前線物語2」(深浦九段著)、そして2007年発売の「最新戦法の話」(勝又清和六段著)では相穴熊がテーマ図として取り上げられることはなかった。
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「四間飛車道場(東大将棋ブックス)」シリーズで振り飛車穴熊が解説されていたのも、やはり2000年前半にまで遡る。
「相穴熊戦は居飛穴優位」と言われ、振り飛車穴熊の使い手が現れていなかった昨今、振り飛車穴熊を駆使して王位を獲得したのが広瀬新王位なのだ。だが、居飛穴優位の論調はまだ大分強いような気がする。
現在、居飛車穴熊VS「ゴキゲン中飛車+穴熊」、いわゆる「ゴキゲン穴熊」の戦いはよく見られるが、ノーマル振り飛車穴熊はまだまだこれから。広瀬王位とアマ強豪・遠藤 正樹氏の共著「とっておきの相穴熊」は、相穴熊の特定の戦型の序盤研究ではなく、相穴熊を指す上でのコツや急所を解説した戦術書だった。はたしてこの「広瀬流」が本人の手によって書籍化されるだろうか。書籍化されれば、プロ棋界はともかく、アマ棋界では振り飛車穴熊が流行することになるだろう。