将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

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西日本新聞社がTwitterを開始、第50期王位戦第4局を中継

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第50期王位戦第4局、▲木村一基八段VS△深浦康市王位

すでに2週間前のことだが、8月4・5日に王位戦七番勝負第4局が行われた。既報の通り、深浦王位が土俵際で踏ん張り、対戦成績を1勝3敗とした。
戦型は相矢倉で、先手・木村八段の森下システムだったが、中盤でぽっきり折れてしまい後手・深浦王位の圧勝だった。
将棋の内容にはここでは触れない。注目するところは、そのインターネット中継だ。

力の入っている西日本新聞社

この第4局は長崎県佐世保市で行われ、インターネット中継は西日本新聞社が運営していたようだ。この中継の力の入れようがなかなかのものだった。一方で、第1局から第3局までのサイトは第4局に劣る。URLとともに紹介しよう。

何かお気付きだろうか。そう、第1局から第3局までのサイトでは、タイトル(HTMLのTITLEタグ)に局数が書いておらず、すべて「第50期王位戦」になってしまっている。そしてすべてフレームレイアウトになっており、左のフレームからどのページを参照しようがURLが変わらない。そのためユーザーにとって見たいページをダイレクトに参照しにくいし、また、被リンクされにくい。
何より評価が低いのが、棋譜手順再生に用いられているプレーヤー。プレーヤー名を忘れてしまったが、昔からあるもので、GUIが美しくなく(これは主観が入っているので参考程度で)、とにかく致命的なのはコメント表示がない。

それに対し、第4局のサイトではタイトルはきちんと「第50期王位戦 第4局」となっている。ページは1つのフレームで構成されており、左のメニューから項目を選べば、ユニークなURLを持ったページに遷移する。
手順再生プレーヤーには他棋戦でも定番の「Kifu for Flash」が用いられている。
さらには第4局ではカメラ設置(これは第2局でもある)、写真グラフ、動画ニュースなど、メニュー項目が非常に充実しているのがわかる。

その中で、珍しいのが「王位戦スタッフの一口コメント(β版)」だ。

Twitter西日本新聞社登場

この「王位戦スタッフの一口コメント(β版)」、一見するとなんだかよくわからないあっさりした内容に思われるかもしれない。実はこれは王位戦スタッフの方(@nishinippon_dsg)の「Twitter」へのつぶやき内容なのだ。渡辺明竜王のブログで言及されたこともあり、多くのフォロワーがいる。私もその1人だ。


最近流行のTwitter(ツイッター)で王位戦スタッフの一口コメントがあります。これはネット中継では新手でしょうか。

Twitter」については適当にWeb検索をして調べるか、あるいは当ブログエントリー「TwitterにGPS将棋ボット登場」などをご参照下さい。140文字という制限付の内容なので、あっさりしているのも理解できる。これには似た実例があり、例えば朝日新聞社のアカウントによるサッカーワールドカップ予選中継が挙げられる。


朝日新聞社は、「asahi」というアカウント名で「Twitter」への投稿を開始した。10日にはサッカーワールドカップ南アフリカ大会予選「日本vsカタール」の模様を配信している。
朝日新聞社によれば、「実験的に始めた。どれくらいの反応があるか検証している段階」とのことで、同社デジタルメディア本部の記者が更新しているという。10日は、横浜にある日産スタジアムでの取材の様子を投稿。

@asahiアカウントを見てみたところ、基本的に朝日新聞の記事のフィードをつぶやき続けているようだ。
@nishinippon_dsgは、その将棋版といえる。ただし対局期間外にニュースフィードをつぶやくわけでもない。先日第5局中継サイトを紹介するつぶやきが2週間ぶりにつぶやかれていた。アカウント名が将棋を想定したものになっていない(「dsg」は「デジタル戦略G」の略のようだ)が、将棋用途にしか用いられないのだろうか?

Twitter利用の賛否と、そもそもどう利用すべきか

私はTwitterユーザーでもあり(@thirdfilerook)、この西日本新聞社スタッフの方のつぶやきをTwitterのほうで先に知ったのだが、はじめはそのアカウント運営の是非に戸惑いを感じた。これについては下記の記事の中の一文が私の気持ちを代弁してくれている。


青森県庁や北海道陸別町といった地方自治体がTwitterを地元の観光PRに活用するケースが出てきているが、このように県や町が新たなインターネットサービスを取り入れる姿勢に対しては、賛成派が82.9%と支持する人が多かった。(中略)
一方で反対派には、(中略)「限られた行政リソースは、他の重要事項に割いてほしい」「公の機関が発信する情報に求められるのはお手軽感ではなくその精度である」といった意見があった(自由回答)。

この最後の2つの回答が私の気持ちだ。賛成派意見やその他の反対派意見については記事を参照下さい。
加えて、つぶやかれた内容・情報は時間が経てばTwitterの過去の時系列に追いやられてしまう−それはTwitterワールドにおける膨大なつぶやきの渦中においては消滅したに等しい−ので、情報を浪費しているように感じていた。そのため西日本新聞社のつぶやきには違和感を感じていたのだが・・・
話の順番は前後するが、そう、このつぶやきは無駄にせず「王位戦スタッフの一口コメント(β版)」として公式サイトにしっかりと反映されていたわけだ。
内容の切り分けとして、

  • 手順再現の方のコメントには指し手に関する内容
  • 王位戦スタッフの一口コメント」ではおやつや解説会での雑談についての内容

となっており、内容が重複しないように配慮されていたようだ。

以上のように、西日本新聞社のスタッフ様の技術力の高さ、そしてWebリテラシーの高さを強く感じた。

王位戦サイトを集約せよ

さて、第4局の中継はとてもよかったわけだが、西日本新聞社様の頑張りだけでは対処できない、共催各社の皆様で力を合わせて解決せねばならない課題がある。それは、「王位戦全体をまとめたトップページが無い」ということだ。共催の形をとっているからか、上記のURL先を見てもわかるとおり、サイトの場所(ドメイン)がバラバラだ。さらには、例えば第3局のページからは、過去の対局、すなわち第1,2局のページへはたどり着けるが、将来の対局、すなわち第4局のページへはたどり着けない(ページ左のメニュー項目を参照)。時系列的に仕方が無いのかもしれないが、次の対局が行われたらメンテナンスをするなりしてほしい。
もしくは、というかこちらが本筋だが、すべての王位戦対局ページをまとめて集約したサイトがあればよい。現状は日本将棋連盟のサイトにもない。
実は、これまた西日本新聞社様のご尽力により「将棋 / 西日本新聞」というページの下の方にて達成されているのだが、いかんせんページランクが低く、例えば「王位戦 将棋」のようなキーワードで検索しても上位には出てこない。
このようなまとめページがトップにくるように、Webページのリンク構造が集約・最適化されることが望ましい。

実は同様の指摘は昨年今頃のエントリー「将棋界のブロゴスフィアってどんな構造になっているのだろう?」にてすでにしていたのだが、1年経っても変化が無かった。誠に残念。

第5局以降の中継サイトは?

第4局中継サイトは非常に完成度の高いものだったわけだが、果たして第5局、そして深浦王位が再び踏ん張ったときの第6・7局はどうだろうか。対局内容だけでなく、インターネット中継にも改めて注目してみたい。