将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

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対局時計(チェスクロック)について、一言物申す

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このエントリーは、いち将棋ファンである私の見解だが、おそらく囲碁やチェスなど他のボードゲームのファンの方々にも当てはまるし、同様の思いなのではないかと信じている。

提言

将棋連盟様およびシチズン様、対局時計(チェスクロック)をもっとお求め安い価格にして下さい。

対局時計とは?

学校の将棋クラブ、町の道場や大会に参加したことのある方ならば、一度はご覧になったことがあるだろう。

対局時計(たいきょくどけい)は、ボードゲームの対局で用いる特別な時計。「チェス・クロック」または「ゲーム・クロック」とも呼ばれている。対局の際に定められた制限時間を計り、時間切れを知らせるための機器(計器)である。

対局時計 - Wikipedia

俗に「チェスクロ」ともよく呼ばれる。前者のアナログ対局時計は、秒読みには対応せず、切れ負けの対局にしか対応できない。
対局を十分楽しむためには、実質後者のデジタル対局時計が必要だ。しかし、この値段が高い。定価が11500円。ちなみにこれを書いている時点でAmazonで品切れというのも問題ではある。Yahoo!オークションを確認したところ、8500円くらいで購入できるようだ。ただしそれでも高い。

チェスクロを使うと燃える。盛り上がる。

中学生以上であれば、「将棋倶楽部24」などのインターネット将棋道場でオンライン対局を楽しむ方々が多いかもしれない。
しかし、小学生だったり地元将棋クラブや将棋部に所属している少年達は、自宅や近所の友人宅で友達同士または親と将棋を楽しむ機会は多いだろう。
その際、盤・駒だけでなく、チェスクロがあると対局にメリハリがつくし、燃える。私の学生時代も、チェスクロを持っている友人宅で、夜通し10秒将棋や1分切れ負け、2分切れ負けでバンバン指しまくったものだ。間違いなく棋力向上に役立った(一切れは燃えるだけでほとんど将棋になっていなかったけれど(笑))。

時間無制限で、阿吽の呼吸で対局を楽しむのももちろんいいが、私個人的にはチェスクロがあったほうがいい。少なくとも持っていて損は全く無い。このスピード社会の時代において、チェスクロは昔以上に重宝されるだろう。24で「持ち時間無制限」の選択肢があっても誰も選ばない。時間制限があって当たり前にもなっているのだ。それがリアル将棋対局において実現できないことはあってはならない。

チェスクロを、お子さんの誕生日プレゼントにできますか?

「チェスクロック」でGoogle検索をかけて、とても心温まる、そして興味深いブログエントリーとそのコメントを見つけた。将棋を楽しむ小学生のお子さんをお持ちのお母さんのエントリーだ。

ひろパパ様がおっしゃったJTでの良い刺激?
「ぽっくん今年サンタさんにもらうもの決めたよ!」
母 「なあに?」
「チェスクロック!」

将棋って、そんなに面白いの? JTこども将棋大会の後遺症

このエントリー本文というより、コメント欄で交わされる主婦の方々のコメントがとても興味深い。チェスクロックは高いし、クリスマスプレゼントといえどもなかなか小学生のために買えるような代物ではない、というようなコメントが見られる。

日本将棋連盟さん、将来を担う子供達の成長および子供達への普及のために、これはよいのですか?と私は思うのだ。前述の通り、チェスクロックは棋力向上に大変役立つし、チェスクロがあれば、友人宅での子供達の遊びの選択肢に「将棋」が入ってくる可能性も高まるはずだ。ちなみに私自身も、欲しかったけれども高かったので結局買わずじまいだった。

なぜは高いのか?安くならないのか?

なぜチェスクロは高いのか。安くするにはどうすればよいか。売れるようにするにはどうすればよいか。少し考えてみた。

なぜ一社独占なのか?

「チェスクロック」や「対局時計」でWeb検索をかけたとき、ひっかかるのは前述のSEIKO社のアナログ対局時計とシチズン社のデジタル対局時計しか出てこない。アナログ・デジタルそれぞれ一社のみ。なぜ一社独占なのだろう?以下デジタル対局時計についていえば、おそらくどこかのボードゲーム協会(連盟)が、シチズン社に委託している、ということなのだろう。特に売れる製品でもないから、他社が追随することもない。これでは価格競争も生まれない。

名機「ザ・名人戦1」と、それを超えられない「ザ・名人戦2」

デジタル対局時計には、有名な機種がふたつある。「ザ・名人戦1」(DIT-10)と、その後継機種「ザ・名人戦2」(DIT-30, DIT-40)だ。現状「2」よりも「1」のほうがみなさんにとってお目にかける機会が多いと思う。下図の左が「1」DIT-10、右が「2」DIT-30。

「1」の機能は将棋対局にとって必要十分。なかなか壊れないし、「2」に比べて安くて(8000円くらいだったか。本当はもっと安くなってほしかったけれど)、ミニマルデザインな逸品だったと思う。しかし残念ながら、今やサポート終了されており、AmazonやYahoo!オークションでも見かけない。

しかし、多くの将棋道場や大会で見かけるのは、いまだにこの「1」のほうではないかと思う。実際、この前社団戦に訪れたときも、百数十(何百?)という対局すべてが「1」使用だった。
私の勝手な想像だが、対局時計販売側としては、「1」のサポートを終了し故障を待って「2」の購入に仕向ける、ということなのだろうか?もしそうだとしたら、これはどうかと思う。要はストレートな動機で「2」を購入にいたらしめるほどに「2」は魅力的な製品ではないのだ。そして皮肉なことに、上記の通り「1」は見事に頑丈でなかなか壊れない。

不要な「新機能追加」では高値の理由にならない

「2」の中でも、DIT-30とDIT-40の2つがある。DIT-40では、DIT-30比で以下のような新機能が追加された後継機だ。詳細はリンク先参照下さい。

4カ国語で“音声秒読み機能”搭載の対局時計、『ザ・名人戦』を発売開始
~日本語、中国語、韓国語、英語の音声で持ち時間を読み上げます!~

http://www.citizen.co.jp/release/08/080702di.html

似たものを売り続けているのだから、中の部材を原価低減してDIT-40はDIT-30よりも安くなってよい(例えば「iPod Touch」は販売開始1年後、機能向上した上で1万円安くなった)ものだが、価格は11500円のまま変わらなかった。
音声ファイル分搭載ROMが増えたのか?原価増だとしても、いろいろな言語が搭載されたところで購入者の9割9分は日本語しか使わない。いや、購入者の5割以上は「ブザー音」を使うのではないだろうか?某所にてDIT-30使用時、日本語読み上げの女性の音声が申し訳ないことに不快(音声の「不気味の谷」にドンピシャに転落した濁声だった)で、「ザ・名人戦1」と「2」が両方使える状況では、私とその友人達は使いやすさもあいまって躊躇無く「1」を使っていた。

使わない機能搭載で価格が上がることは、ユーザーは納得しない。メーカー側の都合でしかない。その都合を成立させるためには、機能を必要としないユーザーのための廉価品(機能を絞った低価格機種)を販売しなくてはならない。なぜ廉価品が無いのか?

新機能が売りになるよう工夫せよ

「ザ・名人戦2」は、囲碁・連珠・将棋・オセロ・バックギャモン・チェス・シャンチー・チャンギ、世界各国のボードゲームの様々なルールに対応している(本体の捺印対応とソフトウェア対応で達成できる)。だがこれで値段が上がるのだとしたら、上記同様ユーザーは納得しない。基本的に1つのゲーム用途にしか使わないからだ。自分の使うゲームのみに対応した廉価品があれば、多くのユーザーはそちらに飛びつくだろう。

いろいろなボードゲームに対応していることを売りにしたいのであれば、それを求めるユーザーを増やす必要がある。将棋大会の会場で、囲碁の普及活動を見たことはないが、同じボードゲーム業界で限られたパイを奪い合うのではなく、複数のボードゲームを同時に好きにさせ、ファンにさせるべきだ。幸いネット上では、各種ゲームの膨大な情報を入手できるので、そういったファンを作りやすい土壌は昔に比べ格段にできている。
または、多機能チェスクロが有効になるよう、陸上のトライアスロン(水泳+自転車+ランニング)のごとく、将棋+囲碁+チェスの「トライボードゲーム」(今作った造語)のような大会があってもよいのではないかと思う。
さらには、機能増の対価を消費者に求めるのではなく、対応ボードゲームの各連盟・協会に販売促進奨励金を要求し、低価格化を実現する方向で努力してほしい。

原価低減を図れ

別の家電業界に目を向けると、その価格下落度合いはすさまじい。例えば薄型テレビ業界は、同スペックの製品であれば年に20~30%は価格が下落していく。お客様にとってはうれしいが、メーカー側はそれに手をこまねいているわけではなく、下落に耐えられるよう同率の原価低減策を血のにじむ思いで実現させている。
転じてチェスクロは?新たな型を起こすのは大きな開発費がかかるので、何年も同じ型で販売を続けている。にもかかわらず、価格が変わっていない(はず)。7セグLEDなんてどんどん安くなっているのではないだろうか?
ただし、あの頑丈さは損なわないように是非とも気を付けてほしい。

チェスクロで儲けようとするな

チェスクロという商品で、連盟・協会およびメーカーは儲けにいくべきではない。数を売って「リアル対局」の促進、ひいてはリアル将棋の競技人口を増やすための、ボードゲーム業界の「ロスリーダー」商品として扱うべきだと思う。

「ネット対局で十分」という方が多いのは、将棋に限らずどの業界でも起こっていることなので重要な問題ではない。競技人口には大いにプラスに働くだろう。だが、ネットだけだと金にならない、という話もまた事実(現ビジネスモデルでは)。リアルでの将棋対局へ誘導する橋渡しとして、盤・駒だけでなく対局時計を普及させる、というのもまた大きな一手だと考える。

おまけ・・・将棋業界以外では?

将棋業界では、上述の通りいまだに「ザ・名人戦1」が広く使われているのだけれど、他のボードゲーム業界ではどうなのだろう?「1」では対応していない業界には「2」が十分に普及しているのかもしれない。また、「1」でも対応していたとしても、「2」が十分に普及している業界もあるのだろうか?それともまた別の対局時計が使われている?どなたかご存知の方、教えて下さい。