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「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

タイトル戦における久保二冠の石田流を振り返る(2)王将戦編

王将戦:奪取→防衛

「タイトル戦における久保二冠の石田流を振り返る(1)棋王戦編」の続き。
過去のタイトル戦挑戦で羽生善治名人相手に苦杯をなめ続けてきた久保棋王だったが、前回の第59期王将戦7番勝負でついに羽生名人からタイトルを奪取した。
今期(第60期)王将戦では、新鋭・豊島将之六段の挑戦を受け、これを退けた。
この2期・12局(いずれも4勝2敗)の中で、先手石田流の将棋は5局。後手が6手目に△8五歩と飛車先を伸ばした将棋は1つもない。棋王戦との対比が見てとれる。
では簡単に振り返ってみよう。なお、すべての棋譜と解説は「王将戦 - 毎日jp(毎日新聞)」で参照できる。

第59期第1局 石田流本組み・美濃囲い VS 舟囲い・△6五歩急戦

羽生善治王将に挑んだ第59期王将戦の第1局。
初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二玉▲6六歩△6二銀▲7八飛(第1図)と進行。後手が6手目に△8五歩と突かなければ、先手は▲6六歩と突いて石田流本組みに進む。

本局は羽生王将が△4二玉型のまま△6五歩と早々に仕掛けたのが非常に印象的。やや無理筋だったようで久保棋王優勢となり、中終盤の羽生王将の玄妙な指し回しに惑わされることなく、そのまま久保棋王が勝ち切った。

第59期第3局 相振り飛車

同じく第59期の第3局。
初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△5四歩▲6六歩△4二銀▲7八飛△5三銀(第2図)と進んだ。左銀を4二から5三に構えるのは振り飛車の合図。戦型は相振り飛車となった。「じっくりとした相振り飛車の手将棋でお互い力を出し切りましょう」という羽生王将のメッセージだろう。オールラウンダーの羽生王将ならではで、印象深いところでは第53回(2003年度)NHK杯戦決勝での2人の対戦でも相振り飛車となっている(結果は久保先生が勝って優勝)。

▲石田流・美濃囲いVS△向かい飛車・矢倉となり、久保棋王の勝ち。

第59期第5局 石田流本組み・美濃囲い VS 銀冠

同じく第59期の第5局。
初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二玉▲6六歩△6二銀▲7八飛と、第1局と同じ進行。
久保棋王が勝てば奪取、という状況でむかえた本局、羽生王将は飛車先の一手(△8五歩)と△5四銀を保留し、銀冠への駒組みを急いだ(△2三銀〜△3二金)。激戦となったが、結果は羽生王将が勝ってカド番をしのいだ。
続く第6局を久保棋王ゴキゲン中飛車で制し、うれしいタイトル奪取となったのは記憶に新しい。

第60期第4局・第6局 石田流本組み・美濃囲い VS 左美濃

若手のホープ豊島将之六段の挑戦を受けた本タイトル戦。第4局と第6局で石田流が現れた。
両局とも初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△6二銀▲6六歩△4二玉▲7八飛と進行。羽生名人の2局と比較して△6二銀と△4二玉の順番が違うだけで、やはり第1図となっている。
以下、豊島六段はいずれも左美濃に進めた。本来はさらに銀冠にまで組みたかったのかもしれないが、その前にいずれも久保王将の方から▲6五歩と仕掛けている。第3図は第4局のケース。第6局では左金が5八にいる陣形で同様の仕掛けを行っている。

結果はいずれも久保王将の勝ち。第6局はタイトル戦の決着局ともなった。

王将戦での石田流 まとめ

ご覧の通り、すべて後手が妥協し6手目△8五歩とは突かず、先手が石田流本組みに進められていることがわかる。
理由としては、棋王戦編で挙げたことと裏返しで、対戦相手(羽生名人、豊島六段)がオールラウンダーでバランス型、終盤型(もちろんすべて強いのは前提とした上で)であることと、2日制のタイトル戦であることの心理的影響が挙げられるだろう。
なお豊島六段の棋風や性格については、「将棋世界」2010年3月号の特集「徹底解剖!豊島将之」などが参考になる。

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棋王戦は角道を止めない石田流、王将戦は角道を止める石田流、と戦型の違いはハッキリしているのだが、共通点がある。それは久保二冠の積極性だ。
前者において、ほぼ必然的にいきなり戦いが始まり居飛車に負けない積極性が必要になるのはもちろん、後者においても、止めた角道を自ら通し積極的に戦っている。そう、相振り飛車の1局以外は、美濃囲いが完成するや否や▲6五歩と突いて自ら開戦しているのだ。
結果論にはなるが、この積極性が久保二冠にとって心地良い戦いのリズムを作り出し、好調な中終盤につながっているのかもしれない。

来年度タイトル戦の主戦となる戦型は?

さて、来年度のタイトル戦では、少なくとも棋王戦と王将戦で久保二冠の将棋が楽しめる。その他に振り飛車党の挑戦者は現れるのか、振り飛車党同士のタイトル戦もあるのか、そして先手石田流は居飛車党に看破されずに来年度も第1線の戦型でいられるのか、など興味が尽きない。