将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

タイトル戦における久保二冠の石田流を振り返る(1)棋王戦編

久保二冠、ダブル防衛

既報の通り、久保利明棋王・王将が、それぞれ渡辺明竜王豊島将之六段の挑戦を退け、二冠防衛を果たした。

ここ3年間で、久保二冠は3回の棋王戦5番勝負(奪取→防衛→防衛)と2回の王将戦7番勝負(奪取→防衛)を戦っているわけだが、この中で先手石田流が多数採用された。しかも、序盤から分岐しその形はさまざまだ。
ここで、それらを簡単に振り返ってまとめておきたい。まずは棋王戦から。なお、すべての棋譜と解説は棋王戦中継サイトから閲覧できる。

第34期第2局 驚異の▲7五飛

佐藤康光棋王(当時)に挑戦した第34期棋王戦の第2局。
初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲4八玉△6二銀▲7四歩(第1図)。玉を上がってからの▲7四歩。鈴木大介八段考案のいわゆる「新・石田流」とも異なる。以下△7二金▲7五飛!と驚異の一手を披露。この一手は升田幸三賞にも輝いた。結果は久保八段(当時)勝ち。

第35期第1局 佐藤九段、踏み込む

無冠となった佐藤康光九段が、翌年挑戦者として登場。流石トッププロは不屈の闘志を持っている。
初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8八角成▲同飛△4五角▲7六角(第2図)。久保棋王の研究範囲に正面から飛び込んでいく佐藤九段。結果は佐藤九段勝ち。

第35期第3局 ▲4八玉〜▲7六飛

同じく第35期の第3局。
初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲4八玉△6二銀▲7六飛(第3局)。▲4八玉と上がったあと、まさかの▲7六飛。角交換から△4五角が見えているが、佐藤九段はこの変化には飛び込まず。結果は佐藤九段の勝ち。

佐藤九段の恐ろしいところは、第34期で苦杯を喫した石田流に対し、第35期できっちりと倍返ししているところ。さらにはこのタイトル戦の直後という絶妙なタイミングで、「佐藤康光の石田流破り」という棋書を出版している。

佐藤康光の石田流破り
佐藤康光の石田流破り佐藤 康光

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先手番2局を石田流で落とした久保棋王だったが、振り駒で後手となった第5局を含む後手番3局をゴキゲン中飛車で制し、防衛に成功。

第36期第1局 いきなり▲7六飛

竜王戦以外で久々のタイトル戦登場となった渡辺竜王を挑戦者にむかえた第36期。第1局で先手石田流が登場した。
初手から、▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩▲7六飛(第4図)。昔から「ここで飛車を浮いてはならない」とされてきた一手をタイトル戦で披露。

この手は新手ではなく、昨年末の王位戦予選、菅井竜也四段VS谷川浩司九段戦や、今年1月のA級順位戦久保利明二冠VS郷田真隆九段戦などでも現れている。しかもこのタイトル戦の前に、「将棋世界」3月号の「イメージと読みの新将棋感」テーマ1図として本局面が取り上げられている。ご存知の通り、そのコーナーには渡辺竜王と久保二冠も登場しており、この局面について大いに語っているのだ。

起こるべくして起こった一局。結果は久保棋王勝ち。なお本局は、「将棋世界」4月号にて渡辺竜王が自戦解説しているのでぜひ参照されたい。

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棋王戦での石田流 まとめ

1局を除きすべて後手が6手目に△8五歩と突っ張る形であり、また残る1局もいきなり角交換。結局全局が力戦型となっている。
この理由として、まずひとつには対戦相手が佐藤康光九段、渡辺明竜王という豪腕タイプだったということが挙げられるだろう。佐藤九段は言わずもがな、渡辺竜王は上述の将棋世界4月号の自戦解説の中で以下のように述べている。

居飛車党としては飛車先を伸ばしていく順にはこだわりたい。これが石田流をとがめにいく最強の順なので、もしダメなら本組みを許すことになる。それじゃ、居飛車党は楽しくない。最初から本組みを許しても「そんなもんだ」と思えばそれでいいんでしょうけど(指せばもちろん大変ですから)、安易に妥協するわけにはいかないんです。

もうひとつの理由として、持ち時間が短い1日制のタイトル戦であることが、少なからず後手側の作戦選択に影響を与えていると思う。2日制のタイトル戦で、初日で形勢がはっきりしてしまったらどうしよう、研究勝負でなく2日間目一杯将棋を指したい、という心理は少なからず働くはずだ。


では王将戦での石田流はどうだったのか。これについては次回。