第23期竜王戦決勝トーナメント:久保二冠、挑戦者決定三番勝負へ
2手目△3二飛戦法
竜王戦決勝トーナメント準決勝という大勝負で後手・久保二冠が選んだ戦型は、なんと二手目△3二飛。もっとも、久保二冠がこの戦法を裏芸として結構多用しているのは以前にも述べた(2009/03/31のエントリー『「久保利明棋王」誕生』など)通りだ。
2手目△3二飛戦法の参考文献としては、言わずと知れた(?)「2手目の革新 3二飛戦法」が挙げられる。本譜のような相三間飛車の形も、当然解説されている。
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参考エントリー
相三間飛車へ
それに対し、先手・丸山九段(居飛車党)が採った対抗策は、これまた珍しい三間飛車。手順の妙で、わずか3手目にして全く前例のない局面をむかえたそうで、本当に将棋は奥が深い。その後、結果的には穏やかで類型のある局面に落ち着いた。
筆者のホームページ「三間飛車のひとくちメモ」内の「猫だまし戦法(初手▲7八飛戦法)講座」の中で、
と書いたが、丸山九段のこと、熱くなることはないにせよ、冷静も保ちつつもいつの間にか久保二冠の土俵に入り込んでしまった、といえるかもしれない。
居飛車党の神谷先生いわく、「初めてかもしれない」という相振り飛車を選択。 まんまと先手の挑発に乗ってしまい、全く慣れない戦型に進めてしまったということでしょう。 この時点、である意味先手が大成功です。
相三間飛車の最近の参考書籍としては、「鈴木大介の将棋 力戦相振り編」が挙げられる。全ページ数の3/4程度を相三間飛車の解説で占めており(残りの1/4は相中飛車)、また本譜のような△3五歩保留型も載っている(ただし後手がすぐに△7二金と上がる形を紹介している)。
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玉をさばく
本局で最も印象に残ったのは、じっと銀を上がった56手目△6四銀(図省略)。それまで攻め駒不足の印象を受けたが、これで中央での駒交換(カナ駒が持駒に入る)が必至となり、急に攻めに厚みが出てきた感がある。
自玉が堅すぎるときは、自玉の囲いをさばく。
振り飛車党が自分から仕掛ける場合は、薄い攻めから始まることが多く、中終盤に手順に囲いをさばき、手駒を増やし、攻めを厚くする・・・こんな傾向が振り飛車党には強いのかもしれない。先日の第58期王座戦挑戦者決定戦でも、終盤に藤井猛九段が63手目に▲6六金(図省略)という見事な囲いさばきをみせて金を手駒にし、快勝した。
はたして竜王戦挑戦者決定三番勝負でも久保二冠の華麗なさばきをみることができるだろうか。楽しみだ。相手は羽生善治名人か、阿久津主税七段か?