将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

第51期王位戦:広瀬章人五段、王位戦挑戦者に

挑戦者決定戦で羽生名人との相穴熊戦を制す

本ブログにて、その切れ味鋭い指し回しを何度か紹介させていただいている広瀬章人五段。その広瀬五段が、王位戦挑戦者決定戦で言わずと知れた羽生善治名人に勝利し、挑戦者の座を手にした。棋譜と詳しい解説(棋譜コメント)は、王位戦のサイトからご覧頂きたい。

盾と矛の対決

戦型は相穴熊(▲広瀬五段の四間飛車穴熊VS△羽生名人の居飛車穴熊)。棋書も出版し、「穴熊王子(振り穴王子)」と呼ばれる広瀬五段の代名詞的な戦法だ。

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講座のタイトルは、

「愛穴熊」! すごいネーミング。一本取られた感じだ。「相穴熊」とかけているのは言うまでもないが、「愛」とは、思いもよらなかった。

一方の羽生名人も、普段から強いのはもちろんだが、こと対振り飛車居飛車穴熊に組んだときには無類の力を発揮する。


羽生名人が後手で振り飛車に対し△1一玉と穴熊に組めたときの成績、19勝2敗! 一方、広瀬五段の先手四間飛車穴熊の成績、24勝8敗!最初に犠牲になったのは私。 盾と矛の対決。

「勝者無し」という矛盾は起こらなかった。だがしかし、広瀬五段の勝利となったことは、矛盾とは言わないまでも大方の予想を覆す驚きの結果だった。


個人的に印象に残ったのは、第1図からじっと▲5八飛と寄った一手。角を5九に引けるようにするため飛車を動かすのは第一感だが、誰しもが▲3八飛と回る手を予想しただろう。3筋はすでに▲3四歩の拠点を作ったのでさらなる手は付けず、別の筋から手掛かりを求めようという構想だが、とはいえ歩が5七にある局面で飛車を5筋に回る手は相当指しにくい。

終盤のポイントは、以前にも紹介した居飛穴の3三の地点(関連エントリー参照)と、「金無し将棋に受け手無し」。
中盤から投了にいたるまで、見所たっぷりだった。

3四に癒えることのないキズを負っていたために、さすがの羽生名人でも受ける形がなかったのか。2年前のC級1組▲広瀬−△村山戦もインパクトがあったけど、相手に金がないときの決め方がすさまじい。

竜王にも相穴熊勝利

広瀬五段は、先日行われた今期王位戦挑戦者決定リーグの対渡辺明竜王戦でも、相穴熊(▲広瀬五段の中飛車穴熊、いわゆる「ゴキゲン穴熊」VS△渡辺竜王居飛車穴熊)で勝利している(第2図。この一局でも、終盤で3三への強烈な一手が現れた)。こちらの棋譜も、はじめに述べた王位戦のサイトで閲覧できるので、是非ご覧あれ。

深浦康市王位VS広瀬挑戦者

深浦王位は居飛車党。王位戦七番勝負でも、広瀬五段の振り飛車穴熊が一局は堪能できるだろう。なお、6/13に行われる大和証券杯でなんと深浦王位と広瀬五段の一局が予定されている。まさかのタイトル戦の前哨戦となった。こちらも要注目だ。

2010/06/12追記:六段に昇段

「羽生名人に1勝」の昇段規定*1により、・・・もとい、「タイトル挑戦」の昇段規定により、広瀬五段が六段に昇段した。おめでとうございます。

*1:実際のところ、この昇段規定を満たすのは他の規定(順位戦B級2組昇級など)を満たすことよりも難しいのが実状。事実、ここ10年位で五段以下で羽生名人に勝った棋士は3・4人いたかいないかではないだろうか(詳しいデータは「玲瓏:羽生善治 (棋士)データベース」の「段位別」をご参照下さい)。おそろしや。