将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

3手目角交換の是非

「志」が問われる3手目角交換

ところで、上記『定着している?「アナグマ王子」』で述べた第59回NHK杯・増田五段VS広瀬五段戦では、先手・増田五段がまさかの3手目角交換(初手から▲7六歩△3四歩▲2二角成!)を見せた。これは、最近流行の「一手損角換わり」の類ではなく、広瀬五段のノーマル四間飛車穴熊を封じるための、純粋一手損の構想である。
正直、目先の1つの勝利のために、志の低い構想を見せたことに憤りを感じた。ましてやテレビ棋戦である。将棋初心者や、何となくチャンネルを回して見ていた方には何と説明すればよいのか。一手損角換わりならば、説明に窮するどころか「境地に達した」将棋の奥深さを語ることができる。だがこれは・・・

プロの将棋では、中終盤にて相手の思い通りにはさせないよう(かつ自分自身もそう思い通りにはいかないことを自覚し)、「手を殺す」手の応酬になりがちだ。これがプロの将棋の奥深さ、奥ゆかしさであり、アマチュアには早々理解できない、そして付記された解説を読むことでじわじわと堪能できる世界でもある。
だが、「手を殺す」ことと、「相手の構想を根元から断つ」ことは断じて違う。

得意戦法と、その代償

相手の得意戦法、それは手を返せば事前にじっくりと対策を練ることができるものでもある。「得意戦法を持つ」ということは、「個性」を発揮できるという特権の代償として、そのようなリスクを負うことになる。
この「リスク」を徹底的に突く、つまり、対穴熊戦の中・終盤の呼吸を事前に再勉強して*1対局に臨む、という覚悟で増田六段には対局に臨んでほしかった。

最後に、昨季のNHK杯戦では、高橋九段、阿久津七段、丸山九段、そして佐藤康光九段は、広瀬五段の穴熊を堂々と受けてたったことを記しておこう。*2

追記

関連エントリーを書いたので、こちらもあわせてご覧下さい。

*1:序盤研究をして、だと味気ない

*2:ちなみに佐藤九段は竜王戦にて、渡辺竜王の初手▲7六歩に対して3度、2手目△3二金を指している(第19期の第6・7局、第20期の第6局。棋譜と解説は「-第21期竜王戦中継/過去の対局-」を参照あれ)。これは両者「ある手」と述べており、手損しているわけでもなく以下先後ともいかように組むことができる。ただし結果的に、渡辺竜王竜王位を連続防衛している。