将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

「定跡書で知ったかぶり」は通用するか

「検索で知ったかぶり」は通用するか

2003年あたりにGoogleが誕生して以来、インターネットの使い方が劇的に変化したのは間違いない。知りたい情報について、適当な(ある程度アバウトでも大丈夫)キーワードでWeb検索すれば、手軽に充実した情報を入手できるようになった。

それを利用し、面白い企画が行われた。


物知りな人はかっこいい。知識豊富でどんな専門家を相手にしても、相手の分野に合わせた会話ができる、そんな人になりたいな、と思う。
で、なる方法を思いつきました。検索エンジンを使えばいいんです。(中略)
会話中にリアルタイムで検索をして、結果をあたかも自分の知識のように披露する。これで相手は「博学!」と思うだろう。直接会って話すときは難しいと思うが、メールや電話ならこちらの姿が見えないし、可能なのではないだろうか。(中略)
ダムマニアにメールで知ったかぶる

案外何とかなっているのがすごい。
このように、自分を緊急状態にし情報を吸収せざるを得ない状況に追い込んで覚えたことは、記憶に定着する可能性が高そうな気がする(未検証。何かそんな調査結果があった気も)。

まあ「テスト」というのはまさに「自分を追い込むため」の代物なのだけれど。自分を「楽しく」追い込む状況は、こんなにもバカバカしい手段でも生み出せるという参考になった。

「定跡書で知ったかぶり」は通用するか

結論から書いておくと、「通用する」。

将棋に関するキーワードを用いて本ゲームを行ったらどうなるのだろうか。例えば

など。前者では例えばこんな会話が想定される。

マニア(アマ四段)「石田流が流行っていますね。」
知ったかぶり(駒の動きがわかる程度の入門者。ただし定跡書で武装)「そうですね。鈴木大介の新・石田流の影響が大きそうですね。」
マニア「あれを見たときはびっくりしました。でも素人が真似をすると火傷しそうですね。」
しったかぶり「そうですね。でも▲7四歩を突かずに▲4八玉と上がって普通に升田式石田流に組む構想も復権しましたし。石田流側の局面打開手段も豊富になりました。私は主に後者を指します。」
マニア「確かに居飛車側としても指されると嫌ですしね。」
知ったかぶり「でも中田功先生のファンである私としましては、コーヤン流の復活に期待したいです。」
マニア「ほぉ。中田先生のファンとは、なかなかの通ですね。」
知ったかぶり「三間飛車と美濃囲いの美しい布陣からの軽い捌きがたまらないですね。居飛車側が早めに△4二角と引く構想に苦戦しているようですが、対策をひっさげ復権していただきたいものです。私自身コーヤン流だと勝ちにくくて、めっきり採用数減ってしまっていますので。」

素人がこんな会話ができるか、とお思いかもしれないが、できる。さすがにリアルタイムで直ちに対応することは無理だが、定跡書や棋書を読めば、いきなり高度な専門用語を知ったかぶりで繰り出すことができる。
また、タイトル戦を観ていても、あーあの戦型ね、この先の展開はあんな感じかな、とより充実した観戦が楽しめる。
定跡の調査は、インターネットで情報を拾い読みして集め切るのはなかなか難しい。数千円の出費にはなるが、好きな戦法、指してみたいと思う戦法の定跡書を買うのが「急がば回れ」だ。はじめのうちは、章立てされていても区別がよく付かず、どこを読んでいいかよくわからないかもしれない。でも、プロの対局時間は長い。考慮時間中にペラペラとページをめくり、該当部分を探す作業も楽しい。

名著「最新戦法の話」

上記例の会話は、具体的には「最新戦法の話」を読めば可能だ。

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「著者からのひとこと」から引用させていただく。

1990年代に入って生まれた新戦法は、それまでの常識を打ち破る性質をもっていました。でも、こうした新戦法は、しかるべき理由があって生まれ、指されているのです。それをできるだけわかりやすく説明しました。いわばロジカルな戦法入門で、鑑賞の手引きとして楽しんで下さい。
勝又清和

この本は、もはやほとんど将棋を指さずに鑑賞する側に回った私にとって、最良の書だ。定跡の進化の推移がロジカルでていねいに解説されている。目次の通り、多くの戦型が取り上げられていて、ページ数が充実しているのも良い。Amazon.co.jpのブックレビューでも、本日時点で9件全件が星☆5個を付けて絶賛している。
2007年4月に発売された書籍であり、やや古くなってしまったが、未だその輝きは色褪せない。タイトル戦のオンライン中継観戦のお供に、強くお勧めする。