将棋の神様〜0と1の世界〜

「三間飛車のひとくちメモ」管理人、兼「フラ盤」&「チェスクロイド」作者がおくる、将棋コラム

新・振り飛車党宣言!(2) 書評その2

2006/01/28のダイアリーに続き、「新・振り飛車党宣言!〈2〉三間、四間、ゴキゲン中飛車」(千葉幸生先生, 佐藤和俊先生, 横山泰明先生 著)についての感想を述べさせていただく。今回は、▲5七銀左〜▲3七桂まで組んでから▲4五歩と仕掛ける、いわゆる「普通の急戦」の解説に対するものだ。

 途中までは定跡どおりなので、手順、感想はすっ飛ばして第1図。もはや終盤の入口のような局面で、三間飛車をあまりご存知で無い方には、どのような経緯でこの局面まで至ったかさっぱりわからないかもしれないが、実はいろいろな書籍・雑誌で取り上げられている定跡形。解説は省かせていただく。

 さてここから、新振り飛車党宣言では①△8四角と②△4三銀の2つの手が解説されている。

 まず前者①△8四角については、以下15手先までの手順とその間の変化が、合わせて2ページに渡って詳しく解説されており、結論は居飛車良し(苦笑)。振り飛車寄りの書籍なのに、なぜ悪いとされる変化をわざわざ2ページに渡って解説するのか・・・といっても、単に悪い変化を説明するのが悪いと言っているのではない。それはそれで、戦法の理解が深まり、本筋の意味がわかってくるから参考になる。問題なのは、良しとすべき後者②△4三銀の解説が十分にされていないことだ。

 後者②△4三銀については、以下10手先まで(第2図)進めた上で、「居飛車の攻めが重いようだが振り飛車も守りが弱いのでいい勝負だと思う。」とあいまいに述べられ、解説が終わっている。なんとたった1ページ。前者を悪いとした以上、こちらの変化を振り飛車良しとしたい、または読者が納得するまで深く突っ込んで解説すべきところであるにもかかわらず、だ。「解説するページ数が足りない」なんて言い訳は、もちろん効かない。前者の2ページを削ればよいのだから。

 第2図は、上記の説明の通り、居飛車の攻めが重い(ように見える)上に振り飛車側の大駒が存分に働いて(いるように見えて)おり、素人目には比較的振り飛車が面白いように見える。・・・そう、振り飛車良しに見える局面で解説を打ち切る。これが著者の意図であると私は推測する。

 三間飛車党の方ならご存知かと思うが、なんのことはない、この書籍よりも発売が先の「三間飛車道場〈第3巻〉急戦」(所司和晴七段 著)116ページに、第2図までの手順が載っているのだ。しかも、第2図以下の手順も。第2図以下、▲8六香△7三角▲2四飛△5七歩▲同銀△4九飛成のところで、▲1三成桂!が好手。最初の▲8六香で、後手の角の働きがいっぺんに悪くなっている(▲8六香△7三角の2手の交換が入ると、善悪がかなり違って見える)。そして最後の▲1三成桂で、馬道をとめず飛車道が通り、居飛車側の攻めの形がいっぺんに軽くなったのがおわかりだろう。三間飛車道場では、▲1三成桂以下さらに8手先まで紹介されており、結果は居飛車良し。

 新振り飛車党宣言は、三間飛車道場よりも後に発売されたにもかかわらず、上記に対する反証を述べていないのだ。これは致命的な欠陥である。三間飛車道場の手順を打ち破る手順が見つからなかったのか、研究手順なので載せられなかったのか・・・いずれにせよ、読者としてはがっかりだ。別の書籍なり、何らかの形で反論手順を示してほしいものである。といっても、私は将棋書籍は抑えているが将棋雑誌は最近めったに見ないので、見逃してしまう(すでに見逃している?)可能性が高い。